| マウス始原生殖細胞の起源と分化 |
| 松居 靖久 |
| (大阪府立母子保健総合医療センター研究所 病因病態部門) |
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次の世代のもとになる生殖細胞が胚発生の初期過程で生じ、全能性を発揮する能力を保ったまま配偶子へと分化する機構は興味深い。マウスの初期発生過程では、胚はまず全能性幹細胞からなるエピブラストを形成し、6.5日胚前後に起こる原腸陥入の開始後に、エピブラスト内での存在場所に応じてそれぞれの組織へと発生運命の決定がなされることが、細胞系譜解析などにより示されている。始原生殖細胞はエピブラストの上端部にある細胞から生じるので、この部分の細胞のみが特異的に始原生殖細胞に運命づけられる機構を調べるために、単離した原腸陥入前のエピブラストから始原生殖細胞が分化する初代培養系を確立した。そしてこの培養系を使って、予定始原生殖細胞領域を含むエピブラストの上半分の断片からは始原生殖細胞が分化するが下半分からは全く分化しないこと、上半分の断片をトリプシン処理により細胞を解離すると分化しないことを明らかにした。このことから、エピブラストの上部に特異的に形成される細胞間相互作用が、始原生殖細胞の形成に重要であることが予想された。また、いろいろな発生段階のエピブラストを同様に培養すると、6.0日胚まではエピブラストのみを単離したものから始原生殖細胞の形成が見られるが、これより早い発生段階のものでは、エピブラスト上端部に接している胚体外外胚葉をつけたままでないと始原生殖細胞が現れないことがわかり、6.0日胚までに胚体外外胚葉がエピブラストに作用することが必要であると考えられた。 このようにして胚内に現れた始原生殖細胞の分化過程の追跡と、そのメカニズムの解明をめざして、Oct-3/4遺伝子の発現制御領域にGFP遺伝子をつないだキメラ遺伝子を用いて、生殖系列細胞で特異的にGFP(Green Fluorescent Protein)を発現するトランスジェニックマウスの作製を試み、GFPが確かに生殖系列細胞で特異的に発現することを確認した。 さらに、このトランスジェニックマウスの8.5-12.5日胚の始原生殖細胞をGFPの発現を指標に蛍光顕微鏡下で単離し、始原生殖細胞の分化過程における、IGF2r遺伝子のメチル化インプリンティングの消去のタイミングを調べた。その結果、始原生殖細胞が生殖隆起に入る前後の10-11日胚で消去が顕著に起こることが明らかになり、そのメチル化消去のメカニズムが、この時期の始原生殖細胞の分化と関わっていることが予想された。 |