細胞-細胞外マトリックス相関による細胞の分化形質の発現について
- Extracellular matrix influences on gene expression -
新井 克彦
(東京農工大学・硬蛋白研)
 Collagen(19分子種)や laminin(11分子種)を代表とする細胞外マトリックス(ECM)蛋白質は、近年の分子・細胞生物学的解析により細胞の接着や増殖、分化の制御に深く関与していることが明らかとなってきた。組織細胞はその周囲或いは基底面において少なからず ECM と接触しており、また、integrin と呼ばれる細胞膜貫通型二量体 (α/β:α1〜α9、β1〜β7)が ECM に対する細胞側のレセプターとして知られている。多くの細胞は integrin により個々の ECM 分子の特定の領域を認識してその情報を細胞内へ伝達しており、例えば、fibronectin 等に見られる Arg-Gly-Asp-Ser (RGDS) というわずか 4 アミノ酸から成る配列はα5β1 integrin のリガンドとして良く知られているが、細胞はこの integrin を介して巨大な ECM 分子内のRGDS 配列を認識することにより、分化や増殖の方向性を決定すると考えられている。Integrin subunit のうちβ1鎖は、focal adhesion kinase (FAK) と呼ばれるtyrosine kinase とリンクしている。この FAK は細胞の ECM への接着に伴う integrinの凝集に伴い自己リン酸化を受けるとともに接着斑蛋白質である paxillin などもリン酸化し、また、そのシグナルは MAP kinase pathway へ伝えられ、細胞の増殖や転写調節に関与するとされている。一 方、以前より、collagen や laminin 内で三次元的に培養された細胞は、単層培養系と比較してより生体に近い機能を発現できることが知られているが、この機能発現にも integrin の関与が示唆されている。演者らのグループもいくつかの細胞株を collagen gel 内で培養することにより、当該細胞が単層培養系では見られない分化形質を発現することを見いだしている。本フォーラムでは2種類のイヌ乳腺腫瘍由来培養細胞を用いた collagen gel 内培養下における新たな分化形質としての matrix metalloproteinase(MMP)-9 と軟骨型(・型、・型、・型)collagen の発現について考察したい。


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