鳥類の網膜視蓋投射とその形成
内藤 順平
(名古屋大学生命農学研究科 生物機能分化学講座 動物形態情報学)
  中枢神経系には大脳皮質、視蓋、小脳、網膜などに見られる様に明瞭な層を形成している部位がある。このような場所は単なる神経連絡の中継所ではなく、ある種の神経情報の統合の場と考えられている。網膜からの入力線維が終わる脳の主たる部位は外側膝状体、視蓋、視交叉上核で、それぞれ形態視、視覚運動機能、明暗情報の処理など異なる視覚機能を受け持っている。この内、視蓋は魚から霊長類まで神経線維層と神経細胞層が交互に重なった層構造を多かれ少なかれ示している。取り分け鳥類の視蓋は他に類を見ないほど多くの層(15層)が極めて整然と重なる多層構造を特徴と している。ニワトリ視蓋は実質的には14層からなり、この内、表層の7層は網膜関 連層と言い、網膜からの入力線維が侵入している。しかし、それより深層には侵入しない。視蓋の第1層は視索層と言い、網膜からの線維で占められている。第3(b)、 5(d)、7(f)層は線維層で網膜線維が終止し、第2(a)、4(c)、6(e) 層は細胞層で網膜線維が通過するとされている。ヒヨコの視蓋も層分化が明瞭であることから、形態学的に分析しやすい。そのため、古くから神経回路網の形成解明のためのモデルとして、ヒヨコおよびニワトリ胚を用いた網膜視蓋投射系の発生学的研究がよくなされてきた。しかし、これまでの網膜視蓋投射系の研究のほとんどは視蓋の中で起こる事柄に主眼が置かれており、その投射線維の母体となる網膜節細胞について鳥類ではほとんど注目されていなかった−その理由は鳥類の網膜節細胞は哺乳類のそれに比べ遙かに複雑であることによる−。そこで、我々は網膜と視蓋を一連のものとしてとらえ、両者を平行して調べている。その為、かなりの労力を要することになるが、網膜視蓋系がどのように形成されるのかこれまで以上に有機的に解析されることが期待される。今回、お話しする主な内容は
1)ニワトリ視蓋の層構造はいつ形成され、その形成過程は如何なるものか。
2)網膜投射線維は視蓋の層形成にどの様に関わっているのか。
3)発生の初期に片眼を破壊し、網膜からの入力線維を除去すると層構造はどう変化するのか、また健側眼からの入力線維の投射様式に変化は起こるのか。
4)網膜視蓋投射線維の終末分岐と層との間に何らかの関係があるのか。また、終末分岐は細胞層(2,4,6層)には本当に形成されないのか。
5)網膜投射線維を出している網膜節細胞の分布、形態的特徴は如何なるものか。そのクラス分けは可能か、可能ならばどの様に分けられるか。
6)網膜節細胞の発生過程は如何なるものか。その軸索は視蓋にいつ到達し、いつ視蓋に侵入するのか。
7)層に特異な網膜節細胞は存在するのか
これらの内容の多くは現在データーを解析中で、残念ながらまだ正確に結果を述べられる段階ではありませんが、皆様のご意見、ご批判を頂きたく存じます。


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