| 骨・軟骨形成に於けるActivin/Follistatinの役割 |
| 舟場 正幸 |
| (麻布大学獣医学部) |
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Activinは、TGF-beta superfamilyに属する、分子量25,000のInhibin beta鎖の二量体蛋白質であり、脳下垂体からのFSH分泌、中胚葉誘導、神経細胞の生存といった多くの過程への関与が明らかにされている1)。一方、Follistatinは、Activin と非常に強い親和性で結合し、多くのActivin活性を中和することからActivin活性調節因子として注目を浴びている2, 3)。Activinの多様な活性は軟骨・骨形成過程にも及び、ニワトリ胚肢芽細胞の軟骨への分化誘導4)や軟骨基質合成の促進5)、さらには骨芽細胞の増殖刺激6)が報告されている。しかしながら、骨形成におけるFollistatinの発現や作用については不明である。 本研究は、軟骨・骨組織におけるActivin/Follistatin系の生物学的意義を明らかにすることを最終目標としている。本講演では、その一環として行った、1) Activin/Follistatinの骨組織での発現、2) 軟骨内骨形成過程における Activin/Follistatin発現の変化、および3) Activin/Follistatinの局所投与による軟骨内骨形成の変化に関する研究を中心に講演する。 1) Activin/Follistatinの骨組織での発現 Robertsら7)はラットの発生過程におけるInhibin alpha, beta A, beta B鎖遺伝子発現の変化をin situ hybridizationによって検討した。その結果、14 d.p.c.以 降の脊椎や四肢においてInhibin beta A鎖の発現が明らかになった。また、マウス骨芽細胞様細胞株でのFollistatin遺伝子の発現が報告されていた8)。演者らは、まず、新生ラットの脛骨骨端部ならびに頭蓋冠から軟骨細胞、骨芽細胞をそれぞれ分離、培養し、Inhibin beta A鎖、Follistatin遺伝子の発現をRT-PCR法により検討した。その結果、いずれの培養細胞においても両遺伝子の発現が確認された。また、抗Inhibin beta A鎖、抗Follistatin抗体を用いて脛骨近位端部の免疫組織化学を行ったところ、いずれの抗体に対しても、増殖軟骨細胞ならびに立方形をした骨芽細胞が陽性反応を示した。これらの結果から、Activin/Follistatinは、軟骨および骨組織で産生され、in vivoにおける軟骨・骨形成に関与する autocrine/paracrine因子であることが示唆された。 2) 軟骨内骨形成過程における Activin/Follistatin発現の変化 次に、塩酸脱灰骨基質の皮下への移植による、in vivo軟骨内骨形成モデル9)を用いて、Activin/Follistatin発現の変化を検討した。このモデルにおいては、移植5日目に前軟骨細胞が出現し、7日目には軟骨形成が行われる。移植9日目までに軟骨細胞は肥大化し、破軟骨細胞と思われる細胞が出現する。11日目には肥大化ならびに変成した軟骨細胞に加えて立方形をした骨芽細胞が認められ、軟骨組織は14日目までに消失する。移植14日目では骨芽細胞と破骨細胞による骨リモデリングが行われ、21日目までに骨髄の形成が見られる。 抗Follistatin抗体を用いて免疫組織化学を行ったところ、増殖軟骨細胞(7日目)や骨形成初期段階の骨芽細胞(11,14日目)が強い反応を示したが、軟骨細胞の肥大化に伴って染色性は急減した(9,11日目)。また、骨髄腔を取り囲む偏平な骨芽細胞は有意な反応を示さなかった(21日目)。移植片中のFollistatin含量をWestern blotによって検討したところ、非石灰化画分では、軟骨形成初期(5日目)と骨形成初期(11,14日目)において高く、軟骨から骨への移行期(9日目)や骨髄形成期(21日目)ではほとんど検出できなかった。一方、石灰化画分では、11日目以降21日目まで経日的にバンドが濃くなった。 これらの結果は、軟骨内骨形成過程において、Follistatinは増殖期の2種類の細胞 −すなわち、軟骨細胞と骨芽細胞−によって産生され、増殖を終えた細胞ではもはや産生されないことを明示している。また、増殖期の骨芽細胞によって産生された Follistatinは、骨基質中に蓄積される可能性が示唆された。骨基質中の Follistatinは、破骨細胞による骨吸収の際に、基質から放出されて骨リモデリン グの調節因子として作用するのかもしれない。一方、Activin beta A鎖分子も Follistatinと同様の局在を示したが、反応の強弱の変化はFollistatinの場合ほど顕著ではなかった。また、Western blotの結果、成熟型のActivinが示す位置(25 kDa) にバンドは見られなかったが、代わって55-60 kDaにバンドが見られた。このバンドは過剰量のActivin Aと反応させた抗体では消失することや、抗Inhibin alpha抗体では有意なバンドは認められなかったことから、Activinに関連する蛋白質を意味すると考えられる。この55-60 kDaのバンドは7日目以降、14日目まで見られ、21日目にはバンドは見られなかった。前述のように、骨形成過程において、Follistatin発現が大きな変化を示したのとは対照的に、Activin(関連)蛋白質の発現は、比較的コンスタントであった。この結果は、軟骨内骨形成過程において、Activinの発現量の変化によって、その活性が調節されるのではなく、Follistatin発現によってActivin活性が調節されている可能性を示唆する。 3) Activin/Follistatinの局所投与による軟骨内骨形成の変化 ここまでの研究から、1) Follistatinは増殖期の軟骨細胞と骨芽細胞で作られ、軟骨肥大化のステージで発現量が少ないこと、2) Activin(関連)蛋白質は軟骨形成初期において発現量が少ないことが明らかになった。そこで、次に、in vivoでの 骨形成におけるActivin/Follistatinの役割を解明するために、Activin/Follistatinの局所投与による軟骨内骨形成の変化を検討した。Activin(関連)蛋白質、Follistatin蛋白質発現は、それぞれ、軟骨形成初期(5日目)、軟骨から骨への移行期(9日目)に減少したのでこれらの時期にActivin A、Follistatinを局所投与し、骨形成への影響を調べた。5 ug/dのActivin Aを5,6日目に移植片近傍に注入した場合、7日目の軟骨基質の面積は52%増加し、軟骨細胞数も同程度増加した。一方、2.5 ug/dのFollistatinを9,10日目に注入した場合の14日目の移植片像は、移植10-11日目を思わせるほど軟骨組織が残り、この移植片中のカルシウム含量はFollistatin注入により有意に減少した。 これらの結果は、Activinの骨形成ステージに応じた多機能性を示唆する。すなわち、軟骨形成初期過程において、Activinは前軟骨細胞から軟骨細胞への分化促進因子として作用する一方、軟骨細胞の肥大化に端を発する、骨への置換過程においては、この過程の進行役を担っているのではないだろうか。また、これらのActivin活性は、Follistatin発現の変化によって調節されていると考えられたが、この機構は、単に骨形成過程だけに限定されるのではなく、多くの過程に共通の調節機構かもしれない。もっとも、FollistatinはActivin活性のみならず、弱いながらもある種のBMP活性を抑えること10)から、単に、Activin結合蛋白質としてActivin活性の調節因子として重要というよりも、"Follistatin結合蛋白質"の活性調節因子として作用しているのかもしれない。いずれにしても、本研究は、軟骨内骨形成過程に対するActivin/Follistatin系の関与を明示し、とくに軟骨から骨への遷移期におけるFollistatinの消失が円滑な軟骨内骨形成過程のkey eventである可能性を示唆している。 References 1) Vale, W., A. Hsueh, C. Rivier and J. Yu, 1990, The inhibin/activin family of hormones and growth factors, In: Peptide Growth Factors and Their Receptors (Sporn, M.B., and A.B. Roberts, eds), pp 211-248, Springer-Verlag, Berlin. 2) DePaolo, L.V., T.A. Bicsak, G.F. Erickson, S. Shimasaki and N. Ling, 1991, Follistatin and activin: a potential intrinsic regulatory system within diverse tissues, Proc. Soc. Exp. Biol. Med., 198: 500-512. 3) 杉野 弘・中村隆範, 1996, アクチビン:多様な生理作用と情報伝達機構, 生化学, 68: 1405-1428. 4) Jiang, T.-X., J.-R. Yi, S.-Y. Ying and C.-M. Chuong, 1993, Activin enhances chondrogenesis of limb bud cells: stimulation of precartilaginous mesenchymal condensations and expression of NCAM, Dev. Biol., 155: 545-557. 5) Luyten, F.P., P. Chen, V. Paralkar and A.H. Reddi, 1994, Recombinant bone morphogenetic protein-4, transforming growth factor-b1, and activin A enhance the cartilage phenotype of articular chondrocytes in vitro, Exp. Cell Res., 210: 224-229. 6) Centrella, M., T.L. McCarthy and E. Canalis, 1991, Activin-A binding and biochemical effects in osteoblastic-enriched culture from fetal-rat parietal bone, Mol. Cell. Biol., 11: 250-258. 7) Roberts, V.J., P.E. Sawchenko and W. Vale, 1991, Expression of inhibin/activin subunit messenger ribonucleic acids during rat embryogenesis, Endocrinology, 128: 3122-3129. 8) Hashimoto, M., A. Shoda, S. Inoue, R. Yamada, T. Kondo, T. Sakurai, N. Ueno and M. Muramatsu, 1992, Functional regulation of osteoblastic cells by the interaction of activin-A with follistatin, J. Biol. Chem., 267: 4999-5004. 9) Reddi, A.H., and C.B. Huggins, 1972, Biochemical sequences in the transformation of normal fibroblasts in adolescent rats, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 69: 1601-1605. 10) Yamashita, H., P. ten Dijke, D. Huylebroeck, T.K. Sampath, M. Andries, J.C. Smith, C.-H. Heldin and K. Miyazono, 1995, Osteogenic protein-1 binds to activin type II receptors and induces certain activin-like effects, J. Cell Biol., 130: 217-226. |