| 低酸素暴露における一酸化窒素の役割 |
| 山本欣郎 |
| (岩手大学 農学部 獣医解剖学教室) |
| 近年の蛍光指示薬の開発によって形態学的な研究においても様々なパラメーターを取り扱うことが可能となってきた。バイオイメージングという言葉で表される一連の仕事は、形態学と生理学を統合する新しい手法として細胞生物学の領域では不可欠な技術となっている。しかしながら、この研究技法の導入には大きな設備投資が必要であるし、細胞の扱いにも技術的な習熟が必要である。今回の発表では、一酸化窒素を例に取って簡便なイメージングの技法を紹介すると共に、形態学と生理学との接点をどう扱うかを考えたい。低酸素暴露の際に種々の細胞ではNOが産生され、細胞保護と細胞障害の二つの相反する作用を持つことが知られている。そこで、迷走神経遠位神経節におけるNOの動態を形態学的手法を用いて観察し、NOの機能を考察した。まず、NADPH-diaphorase反応とeNOS、nNOS、iNOSに対する抗体を用いた免疫組織化学によってeNOSの存在を明らかにした。次に、diaminofluorescein (DAF)を未固定のスライス標本に適用しNO産生量の変化を半定量的に検討した結果、低酸素暴露によってDAF反応が増強した。Photoconversion法による電子顕微鏡による観察では、DAF反応産物がミトコンドリア内膜に認められた。さらに、dichlorofluorescein (DCF)によって活性酸素体産生量の変化を検討した結果、DCFの反応は低酸素暴露により減弱したが、3分間の酸素再暴露により最初の値よりも強い蛍光強度を示した。以上の結果から、低酸素暴露の際にeNOSによって産生されたNOはミトコンドリア内膜の呼吸鎖に作用してミトコンドリア電位の維持を通じて細胞保護に働き、酸素の再暴露は過剰に産生されたNOとパーオキシナイトライトを生成して細胞障害に関与していると予測された。 |